うるさい場所が苦手
人一倍、敏感にストレスを感じる
嫌いなものを怖れて避けてしまう
感覚過敏があると、外界の捉え方が通常と異なり、物事の感じ方や体験のし方、そして行動のし方も通常とは異なる可能性があります。
刺激に対する反応が大きくなり、好きなものは好んで求めたり没頭できたりする一方、疲れやすかったり、感知しない刺激には見逃したり、鈍感であったりします。
また、脅威や苦手なものを敏感に察知して怖れたり、避けたくなったり、さらには強い感覚を伴う体験の記憶にいつまでも付きまとわれたりもするでしょう。
感覚問題は、毎日の生活に直結する問題であるにもかかわらず、「当たり前の感覚」として捉えていることから、周りの人たちはもちろん、ご本人自身にも誤解されていることが少なくなくて、そのつらさにガマンするしかなかったり、或は、周りの人と同じように上手くできない自分に落ち込んだりすることも少なくありません。
特有な世界はなぜ生まれる?
なぜ、過敏な世界観が生まれるのか、そのメカニズムの全貌は研究途上ですが、1つの捉え方として、”一度に大量の刺激を取り入れてしまう”ことにその理由を説明できます。
感覚過敏を持つ人は、新しい場面や特定の刺激によって「感覚(意識)の窓」がいっぱいになりやすく、後続の刺激が入り込めなくなってしまうことを体験しやすいのかもしれません。
※感覚(意識)の窓とは、取り込める刺激の範囲(枠)を表します。
この過程をモデル図に表すと、次のようになります。
過敏者の場合は、ある特定の刺激が入り込むと、感覚(意識)の窓内いっぱいにそれが広がり、そのまま「停留」するかのように体験されます。
すると、後続の刺激は、感覚(意識)の窓内に入り込めない状態で通過してしまい、見落とされるのです(これが鈍感な面となります)。
この流れによって、刺激と刺激の関係性やつながり(流れ)、全体像などを捉えるのが難しくなり、拡大される刺激によって圧倒されてしまうのです。
このように、感覚過敏を持つ人は、感覚の刺激間のアンバランス(凸凹)を経験しやすく、同じ刺激(場面)であっても感じ方が大きく異なってくるのです。
通常人の場合は、これほどの刺激の”拡大と停留”は生じないので、刺激は順を追って少しずつ感覚(意識)の窓内に取り込まれ、また外へと流れて行きます。
従って、通常人の場合は、複数の刺激が感覚(意識)の窓内に同時に収まりやすく、また刺激間の流れの把握や各刺激への注意切替えもしやすくなります(各刺激のサイズ感もそこまで拡大はしません)。
しかし、通常の人であっても、”衝撃的な場面”に遭遇したときには、この”拡大と停留”が生じて、前後の感覚が「わからなくなる」ことが起きます(トラウマ体験や強いストレス場面など)。
そう考えると、感覚過敏を持つ人の世界観は、トラウマに近いような衝撃を日常的に経験していると言えるのかもしれません。
感覚過敏が関連する心理学的問題
- 発達障害の感覚過敏
- HSP/HSCの感覚過敏
- トラウマ経験者の感覚過敏(過覚醒)
- パーソナリティ障害の易怒・易刺激性、感覚過敏
- 他の心の不調時に伴う易刺激性、感覚過敏
感覚の体験の仕方(記憶を含めた広義の感覚体験)が必要以上に大きい方は、こうした感覚処理レベルの生きにくさ(悩み)を持っているかもしれません。
それは、従来の心理学で言う”防衛機制”とは異なり、自我やパーソナリティ機能(性格特性)の動き出す、それ以前の次元で苦しんでいることが考えられるのです(言葉になるタイミングよりずっと前の感覚処理レベルで悩んでいる)。
- 頭ではわかっているのに、いつも同じように考えてしまう、感じてしまう、反応してしまう。
- どうしてあんなこと(行動、判断)をしてしまうのかと、冷静になると後悔しやすい。
- どうして自分だけ上手くやれないのか…と不思議でたまらない。
- 正直、自分の考え方(性格)に問題があると思うし、決周囲からもそう思われているに違いない。
自分の感覚傾向を把握しましょう
自分の感覚傾向を調べることができます。『感覚プロファイル』という心理検査があります。
この検査は、自分の感覚の特性の強さが、同年代集団内のどこに位置するか(どれくらい平均から離れている)を教えてくれます。
結果からは、4つの『感覚の体験の仕方』における強さを知ることができるほか(感覚の過敏、鈍感、探求、回避)、『感覚の種類』(どの領域で現れるか)も知ることができるので、日常の場面ごとの対策を立てるのに役立ちます(聴覚・嗅覚、動き、視覚、触覚、社会的活動、聴覚の領域別)。
これまで性格の問題として、必死にそれを変えようとしてきた部分が、ひょっとしたら、感覚レベルの特性から捉え直すことができるかもしれません。
その理解は、自分をもっとありのまま捉えることにつながり、すなわち、もっとラクな生き方の秘策(セルフケア)につながるかもしれません。
繊細な部分についてご相談がある方は、一度、ご連絡ください。
<参考図書>
熊谷高幸『自閉症と感覚過敏』特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?