大切な人を失う経験は、残された者の悲しみ(グリーフ)と共に深まります。
愛する人を失うということは、人間に襲いかかるもっとも悲惨な経験の一つである。それは、単に苦痛に満ちた経験であるのみならず、それを救済することに我々があまりにも「無力」であるため、それを目撃することも苦痛なことである。
失われた人間が取り戻されない限り、残された者を真に慰め得るものは何一つ存在しない。その空白を埋めない限り、どのような対策も単に感情を傷つけるだけに終わるかもしれないー
J.ボウルビイより
また、悲しみ(グリーフ)のあらわれ方も、誰一人として同じものはありません。
私は自分で自分がわからなくなりました。
祥子(娘)が死んでしまったのに、涙が出ないのです。“おかしい、おかしい、なに、何がおこっているの?” そんな叫び声が心の中で大きく渦巻いていました。
やらなければならない事はなんとか流されるようにこなしてはいたものの、自分の心が見えないのです…
渡辺理香「会いたい」:(社)被害者支援都民センター
多くの場合、悲しみ(グリーフ)の痛みは、それについての『誤解』から始まります。
- 全てを時間が解決してくれる。
- そんなに悲しむと亡くなった人も報われない。
- 故人の分まで幸せにならなきゃ
- 前に進まないと、もっと頑張らないと!
悲しみ(グリーフ)の痛みが消えないとき、その痛みをケアすることも大切です。
とくに、悲しみ(グリーフ)についての『誤解』を知っておくことは、大事なケアの一つと言えます。
- 悲しみのプロセスには個人差があり、ゆっくり進む場合もあります。
- 悲しみをムリに抑え込んだり、いじくりまわすことは正しくありません。
- 時間が経ってもなお、悲しんでしまうことを、責める必要はありません。
- 泣きたい時は、泣いてもいいんです(悲嘆に場を与えるのは必要なことでもあります)。
- もちろん、泣けないことも、おかしくはありません。
- 会いたい気持ちをどうこうする必要はありません
- “頑張らないと”“前に進まないと”“時間が解決する”と決めつける必要はありません。
- 悲しみが止まることは、亡くなった人のことを忘れるという意味ではありません。
- ともに笑い、楽しかった日々、つらかったことなど、その人の想いを巡らせてもいいんです。
悲しみのプロセスを自分なりのペースで歩めているとき、きっと、癒し(回復)への変化をもっと近くに感じることでしょう。
でも、それまでの間は、ありのままの気持ち(自分)を大事にしておきましょう。